「伝えた」と「伝わった」は、同じではない

~説明したつもり、わかったつもり。その間にある小さなズレ~

先日、ちょっとした出来事がありました。

私がお仕事をご紹介した方から、その後の状況について報告をいただいたときのことです。

お話を聞く限りでは、これまでとはかなり大きく状況が変わるように感じました。

「それなら、対応するための準備が必要なのでは?」

「体制も考えた方がいいのでは?」

そんなことが頭に浮かび、少し心配になりました。

そこで、改めて直接お話を聞いてみることにしました。

すると……

私が理解していた内容とは、かなり違っていました。

結果としては、心配していたようなことではなく、ひと安心。

「よかった、よかった」で終わったのですが、同時に少し考えさせられました。


私の早合点だったのか、説明が足りなかったのか

もちろん、私の早合点もあったと思います。

聞いた言葉から、

「ということは、こういうことだな」

と、自分の経験や知識をもとに先を想像してしまった部分もありました。

でも正直なところ、

「最初にもう少し詳しく説明してもらえていたら、こんなに心配しなくて済んだのにな」

という気持ちもありました。

ところが、伝えた側からすれば、きっと必要なことは説明したつもりだったのだと思います。

そして興味深かったのは、

なぜ私がそのように理解したのかが、伝えた側にはあまり伝わっていなかったこと。

ここに、コミュニケーションの難しさがあります。


「伝えた」と「伝わった」は違う

これは今回に限らず、仕事をしていると時々経験します。

「ちゃんと説明しました」

「前にも伝えました」

「そういう意味で言ったんじゃないんです」

でも相手からすると、

「そうは聞こえなかった」

「そういう意味だと思った」

ということがあります。

どちらかが嘘をついているわけでも、

どちらかが悪いわけでもありません。

伝えた内容と、相手が受け取った内容は、必ずしも同じではない。

人は言葉をそのまま受け取っているようで、実際には、自分の経験や知識、置かれている状況などを通して意味を受け取っています。

だから同じ言葉を聞いても、頭の中に描くものが違うことがあります。


「ちゃんと伝えたのに」は、誰を基準にしている?

職場でもよくあります。

上司が、

「ちゃんと説明したのに、部下が理解していない」

と言う。

保育の現場なら、

「保護者にはきちんと説明したのに、違う意味で受け取られてしまった」

ということもあるでしょう。

でも、

「伝えたかどうか」を決めるのは自分。
「伝わったかどうか」は相手の中で起きること。

ここを同じにしてしまうと、

「言った・言わない」

「説明した・聞いていない」

という話になってしまいます。

本当に大切なのは、

「私は何を言ったか」ではなく、「相手にはどう伝わったか」

なのかもしれません。


だから「確認する」が必要になる

では、どうすればいいのでしょう。

私は今回の出来事から改めて、

確認することの大切さ

を感じました。

伝える側なら、

「ここまでで、どんなふうに理解されましたか?」

「私の説明で分かりにくいところはありませんでしたか?」

と確認してみる。

聞く側も、

「私はこういう意味だと理解したのですが、合っていますか?」

と返してみる。

ほんの少し確認するだけで、大きなすれ違いになる前に修正できることがあります。

特に、大きな判断や変化を伴う話ほど、

「言ったから大丈夫」ではなく、「同じ理解になっているか」まで確かめる。

それが必要なのだと思います。


次回の保育研修では、あえて「伝わらない」を体験します

次回の保育研修では、この「伝える」と「伝わる」の違いを、頭で理解するだけではなく、実際に体験していただこうと思っています。

使うのは、ブラインドドローイングです。

二人一組になり、一人があるものを言葉だけで説明し、もう一人はその説明を聞いて絵を描きます。

説明する側には、頭の中に「正解」があります。

だから、

「ちゃんと説明している」

と思っています。

ところが、描いたものを見てみると……

「あれ?」

「そういう意味じゃなかった!」

「私はこう聞こえたんだけど」

きっと、いろいろな違いが出てくると思います。

でも、大切なのは上手に描けたかどうかではありません。

なぜ、同じ説明をしたのに違うものが出来上がったのか。

そこを一緒に考えることです。


どう言えば「伝わった」のだろう

ワークの後には、

「説明のどこが分かりにくかった?」

「何を確認すればよかった?」

「聞く側から質問できたことは?」

「どんな言葉ならイメージしやすかった?」

と振り返ります。

そして、それを実際の保育に置き換えて考えます。

子どもへの声かけ。

保護者への説明。

職員同士の引き継ぎ。

園長や主任から職員への指示。

どれも、

伝えたつもりなのに、違う意味で受け取られる

ことが起こり得ます。

だからこそ、伝える力とは「上手に話す力」だけではありません。

相手の反応を見る。

確認する。

質問を受ける。

必要なら言い方を変える。

そして、

「どう伝わった?」までをコミュニケーションにする。

そこまでできて初めて、「伝える」が「伝わる」に近づいていくのだと思います。


私も、確認することを忘れないように

今回の出来事は、結果的には私の余計な心配で終わりました。

でも、

「ちゃんと説明してほしかったな」

だけで終わらせるのではなく、

私自身も、

「私はこう理解したけれど、合っていますか?」

と、もっと早く確認できたかもしれません。

コミュニケーションのすれ違いは、どちらか一方だけの問題とは限りません。

伝える側にもできることがあり、

受け取る側にもできることがある。

そして何より、

「伝えたから終わり」にしないこと。

仕事でも、保育でも、子育てでも。

私たちは毎日、たくさんの言葉を誰かに届けています。

その言葉が、

「何を伝えたか」ではなく、
「どう伝わったか」。

そこまで少し想像できるだけで、人と人とのすれ違いは、ずいぶん減らせるのではないでしょうか。

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