「伝えたつもり」が、子どもとのすれ違いになることも。

~保育士研修で見えてきた、子どもの気持ちに気づく力と伝え合う力~

保育士研修で大切にしているのは、知識を増やすことだけではなく、日々の保育の中で子どもや周囲の人への関わり方を見つめ直すことです。

「ちゃんと伝えたのに、どうして伝わらないんだろう?」

保育の現場だけでなく、家庭でも職場でも、そんな経験はありませんか?

先日、保育に携わる先生方を対象に、「子どもの“言えない気持ち”に気づく保育コミュニケーション研修」を実施しました。

今回は、子どもの絵を通して気持ちに気づくことに加え、「伝える」と「伝わる」の違いを体験していただく3時間の研修でした。

研修後にいただいたアンケートには、先生方の率直な思いや、これからの保育につながる気づきがたくさん書かれていました。

子どもの気持ちを、もっと理解したい

研修前のアンケートでは、

  • 子ども一人ひとりの気持ちを、もっと理解したい

  • 職員同士で気軽に話し合い、意見交換できる関係をつくりたい

  • 自分の考えを相手にうまく伝えたい

といった思いが寄せられました。

日々、子どもたちと向き合う先生方。

忙しい毎日の中で、一人ひとりを大切にしたいと思いながらも、思うように関われないことがあるのではないでしょうか。

でも、こうして「もっと理解したい」「もっとよい関わり方をしたい」と考えていらっしゃること自体が、とても大切な一歩だと感じました。

同じものを見ても、見え方は一人ひとり違う

保育士研修では、色や形、絵を使ったワークに加えて、言葉だけで図形を伝え、相手に描いてもらう体験をしていただきました。

同じものを見ていても、伝える人と受け取る人では、思い浮かべるイメージが違います。

「ちゃんと説明したはずなのに」

「そういう意味で言ったんじゃないのに」

そんなすれ違いが、ワークの中でも起こります。

でも、それは誰かが悪いわけではありません。

私たちはそれぞれ、違う経験や価値観を持っているからです。

だからこそ必要なのは、一方的に伝えることではなく、

「あなたにはどう見えている?」

「私はこう思ったけれど、あなたはどう感じた?」

と、相手を理解しようとする姿勢なのだと思います。

子どもの絵は、気持ちを知るための入り口

子どもは、自分の気持ちをすべて言葉にできるわけではありません。

何となく嫌だったこと。

うれしかったこと。

寂しかったこと。

自分でもうまく説明できない気持ち。

そんな気持ちを考える手がかりの一つとして、絵があります。

ただし、絵の色や形だけで、子どもの気持ちを決めつけることはできません。

大切なのは、絵だけを見るのではなく、その日の表情や言葉、遊び、いつもとの違いにも目を向けること。

そして、

「この絵、どんなところなの?」

「ここには誰がいるの?」

と、子どもとの対話を始めることです。

絵は、子どもを診断するためのものではなく、子どもをもっと知るための入り口。

私はそう考えています。

保育所保育指針でも、一人ひとりの発達過程や個人差を踏まえた保育の大切さが示されています。

子どもの表現を決めつけず、日々の姿と合わせて理解することを大切にしたいですね。

参考:こども家庭庁「保育所保育指針」関連資料

保育士研修で見えてきた、先生方の小さな一歩

今回のアンケートでうれしかったのは、先生方が研修で感じたことを、明日からの具体的な行動につなげようとされていたことです。

保育士研修のイメージ画像。保育士が子どもたちと絵を描きながら笑顔で対話し、子どもの気持ちに気づく力と伝え合う力の大切さを紹介

回答には、

  • 相手の話を最後まで聴く

  • 子どもの表情や言葉をよく観察する

  • 一方的に伝えず、質問や確認を取り入れる

  • 自分の考えだけで判断せず、相手の立場から考える

  • 職員同士でも対話する機会を大切にする

といった思いが見られました。

大きなことを変えなくてもいいのだと思います。

いつもの「なんで?」を、「どうしたの?」に変えてみる。

「わかった?」と聞く代わりに、「どう思った?」と尋ねてみる。

そんな小さな変化が、子どもとの関係を少しずつ変えていくのかもしれません。

子どもが安心できる園は、先生も安心して話せる園

今回、もう一つ心に残ったのは、先生同士の関わりについての声でした。

子どもに対して「気持ちを理解しよう」と思うことと、先生同士が相手の考えを理解しようとすること。

実は、根っこは同じです。

先生が困ったときに相談できる。

違う意見でも安心して話せる。

誰か一人で抱え込まず、一緒に考えられる。

そんな関係があるからこそ、子どもたちにも、より丁寧に向き合えるのではないでしょうか。

私は、研修は一度受けて終わるものではなく、日々の関わりの中で少しずつ育てていくものだと思っています。

「わかる」より、「わかろうとする」

今回の保育士研修で、私が一番お伝えしたかったこと。

それは、

「わかる」より、「わかろうとする」。

ということです。

子どもの気持ちも、大人の気持ちも、簡単にわかるものではありません。

でも、わかろうとしてくれる人がいる。

自分の話を聴いてくれる人がいる。

その安心感が、人と人との関係を育てていくのだと思います。

気づくことから、関係は変わり始めます。

でも、気づいただけでは関係は変わりません。

その気づきを言葉にし、伝え合うことから、子どもが安心できる関係が育っていきます。

今回ご一緒した先生方の小さな一歩が、子どもたちの笑顔につながっていくことを願っています。

そして私も、先生方と一緒に学びながら、子どもも大人も安心して過ごせる園づくりを応援していきたいと思います。

子どもの理解から、先生同士が支え合える園づくりへ。
子どもの絵と心理学を取り入れた体験型研修を行っています。
単発の研修から、学びを日々の保育に定着させる伴走型支援まで、園の状況に合わせてご提案しています。
研修についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。