褒めているのに、なぜ部下は育たないのか

~「褒める」と「認める」は、似ているようで違います~

「部下は褒めましょう。」

最近、管理職研修でもよく耳にする言葉です。

もちろん、

褒めることは大切です。

でも私は、

30年間人材業界で働き、多くの部下を育てる中で、

少し違うことを感じていました。

それは、

褒めるだけでは、人は育たない。

ということです。


まず、

一つ整理しておきたいことがあります。

「褒める」と「おだてる」は違います。

おだてることは、

相手を気分よくさせることが目的です。

時には、

本心ではなくても、

「すごいね。」

「さすがだね。」

と言うこともあるかもしれません。

一方で、

本当の意味で褒めるということは、

相手の努力や工夫、成長や才能に気づき、それを言葉にして伝えること。

私はそう考えています。


例えば、

「すごいね。」

よりも、

「最後まで諦めずに取り組んでいたね。」

「お客様への説明が、とても丁寧だったね。」

「資料がとても見やすくて、お客様も理解しやすかったと思うよ。」

そんなふうに、

事実を伝える褒め方の方が、

相手にはずっと伝わります。

なぜなら、

「ちゃんと見てもらえていた。」

そう感じることができるからです。


そして私は、

褒めること以上に、

大切にしていたことがあります。

それが、

認めることです。

認めるというのは、

結果だけを見ることではありません。

うまくいかなかった日も、

努力していたこと。

悩みながら挑戦していたこと。

周りを支えていたこと。

その人らしさ。

そんな、

結果だけでは見えない価値に気づくことです。


心理学でも、

子どもや大人が成長するためには、

結果だけではなく、

努力や工夫、挑戦した過程を認めることが大切だと言われています。

「才能があるね。」

と言われるよりも、

「よく考えたね。」

「最後まで工夫したね。」

と言われた人の方が、

次も挑戦しようという気持ちが育ちやすいことがわかっています。


私も支店長時代、

売上だけで部下を見ないようにしていました。

もちろん、

数字は大切です。

会社ですから、

成果を求めることも必要です。

でも、

数字だけでは、

その人の価値は測れません。

お客様から感謝されたこと。

後輩の相談に乗っていたこと。

誰よりも早く出社して準備していたこと。

そんな姿も、

私はできるだけ言葉にして伝えるようにしていました。


人は、

褒められるとうれしくなります。

でも、

認められると、自分を信じられるようになります。

私は、

その違いを何度も見てきました。


企業研修では、

心理的安全性についてお話しすることがあります。

心理的安全性とは、

安心して意見を言える職場づくりと言われます。

でも、

その土台になるのは、

制度ではありません。

「ちゃんと見てもらえている。」

「努力に気づいてもらえている。」

「結果だけで判断されていない。」

そんな日々の積み重ねが、

安心して挑戦できる職場をつくっていくのだと思います。


だから私は、

管理職の皆さんに、

「もっと褒めましょう。」

ではなく、

こうお伝えしたいのです。

もっと相手を見てください。

努力に気づいてください。

工夫に気づいてください。

小さな成長を見逃さないでください。

そして、

その気づきを言葉にしてください。

その一言が、

部下の自信になり、

挑戦する勇気になり、

信頼関係につながっていきます。


私はこれからも、

人を育てるのは評価だけではなく、

「あなたを見ていますよ。」

というメッセージだと信じて、

企業や保育・教育現場で、

心理的安全性と人が育つ関わり方を伝えていきたいと思います。


研修・講座のご案内

私は企業や保育・教育現場で、心理的安全性や管理職支援をテーマに研修を行っています。

人が育つ職場には、安心して挑戦できる環境があります。

その環境をつくるのは、特別な制度ではなく、管理職の日々の関わり方です。

一人ひとりの努力や成長に気づき、認める文化を育てることで、人も組織も大きく変わっていきます。

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