上司も部下を選べない。だから、チームづくりが必要になる
~違う人の力を活かして成果につなげるのが、マネジメント~
チームづくりについて考えるとき、私はよく聞く「上司は選べない」という言葉を思い出します。
確かにそうだと思います。
どんな上司のもとで働くのかを、自分で決められる会社はそれほど多くありません。
でも、長く管理職を経験してきた私が思うのは、
実は、上司だって部下を選べるわけではない
ということです。
だからこそ管理職に求められるのが、会社から任されたメンバー一人ひとりの力を活かすチームづくりです。
気の合う人だけを集めることはできない。
得意なことも、考え方も、経験も違う。
では、そんなメンバーでどうすればチームとして最大限の力を発揮できるのでしょうか。
人事異動がある。
新入社員が配属される。
中途採用の人が入ってくる。
そして、
「このメンバーでお願いします」
とチームを任される。
そこには当然、いろいろな人がいます。
気の合う人もいれば、合わない人もいる。
考え方も違う。
経験も違う。
得意なことも違う。
仕事の進め方も違う。
最初から全員が同じ方向を向き、同じように仕事ができるなんて、むしろ珍しいのではないでしょうか。
では、会社から任されたメンバーで、一人ひとりの力をできるだけ発揮してもらい、チームとして成果を出すにはどうしたらいいのでしょう。
私自身、管理職を経験する中で、何度も考えてきたことです。
「私がやります」と言っていた私
管理職時代、新しい仕事をどうしても取りたいと思うことがありました。
「この案件は、ぜひやりたい」
そう思って上司に相談します。
でも、新しい仕事です。
難易度が高いものもあります。
当然、上司から聞かれます。
「それで、誰がやるの?」
「本当に対応できる人がいるの?」
そう聞かれて、答えに困ることもありました。
それでも、この仕事を取りたいのなら、言い出した自分にも責任がある。
中途半端な気持ちで「やりたい」と言うわけにはいかない。
そう自分なりに覚悟を決めて、
「誰もいないのであれば、私がやります」
と答えていました。
私にとっての「私がやります」は、
誰もやらないから仕方なく引き受ける、という意味ではありませんでした。
この仕事を取りたいと言った以上、最後は自分が責任を持つ。
そんな気持ちだったのだと思います。
「では、マネジメントは誰がするの?」
そんな私に、上司から言われたことがあります。
「阪本さんにできることでも、誰にでもできることではないよ」
そして、
「阪本さんがそれをやったら、マネジメントは誰がするの?」
と。
当時は、少し耳の痛い言葉でした。
自分がやればできる。
仕事も取りたい。
責任も持つつもりでいる。
それなのに、なぜいけないのだろう。
でも、管理職を続ける中で、少しずつその意味が分かるようになりました。
管理職の「責任を持つ」と、
「全部、自分でやる」ことは同じではない。
自分が実務に入り込んでしまえば、その仕事はできるかもしれません。
でも、その間、
チーム全体を見るのは誰なのか。
次の仕事を考えるのは誰なのか。
メンバーを育てるのは誰なのか。
そして、同じような仕事が来たときに、
「阪本さんがいなければできない」
では、組織として仕事を広げていくことはできません。
チームづくりは「誰ができる?」から「どうすればできる?」へ
ここで、管理職として考えることが変わっていきました。
「この仕事を取りたい。でも、できる人がいない」
なら、
自分がやる。
それだけではなく、
「誰ならできるだろう?」
さらに、
「今はできなくても、どうすればできるようになるだろう?」
と考える。
経験のある人と組ませる。
一部分から任せる。
必要な知識を学んでもらう。
最初は一緒にやって、少しずつ任せていく。
そうやって「できる人」を増やしていく。
自分が一つの仕事を終わらせることより、
チームとしてできることを増やしていく。
それも管理職の大切な仕事だったのだと思います。
チームづくりは「相性がいい人」を集めることではない
もちろん、人には相性があります。
話していてテンポの合う人もいれば、どうも噛み合わない人もいます。
「どうしてそんな考え方をするんだろう」
と思う相手もいるでしょう。
でも、管理職が、
「あの人とは合わないから」
で終わらせてしまったら、その人の力を十分に活かすことはできません。
だからといって、全員を好きになる必要もないと思っています。
好きになることと、理解しようとすることは別です。
この人は何を大切にしているのか。
何が得意なのか。
どんな仕事なら力を発揮するのか。
どんな支援があれば一歩前に進めるのか。
一人ひとりを知る。
チームづくりは、そこから始まります。
年間予算から始まるチームづくり
これは、年間予算を考えるときにも大切にしていたことです。
会社から与えられた年間予算。
管理職として達成しなければならない数字です。
でも、
「今年はこの数字です。よろしくお願いします」
と伝えるだけでは、人はなかなか動けません。
私は、年間予算を全員でつくることを大切にしていました。
年末年始には、翌年の数字をどうやってつくるのかを考える。
そして年が明けたら、できるだけ早くメンバーに説明する。
特に伝えていたのは、
年初の売上が、その後の一年にどれだけ影響するのか
ということでした。
一年の最初にしっかりスタートを切る。
そのために、年間予算を具体的な行動に落とし込んでいく。
いわゆる「スタートダッシュ」です。
でも、ここでも、
全員に同じ数字を割り振ればいいわけではありません。
一人ひとりの経験や強みも考えながら、みんなで数字をつくっていく。
振り返ってみれば、年間予算をみんなで考えることも、私にとってはチームづくりの一つだったのだと思います
同じ「1件」でも、価値は同じではない
担当するクライアントの規模は違います。
地域も違う。
価格も違う。
一件あたりの売上も利益も違います。
件数を積み上げて数字をつくる仕事もあれば、一件の大きな契約が年間の数字を大きく動かすこともある。
薄利多売のマーケットもあれば、価格競争が激しいマーケットもあります。
つまり、
同じ「1件」でも、その中身はまったく違います。
だからこそ、
単純に会社から与えられた数字を人数で割って、
「一人○○円ね」
では終われません。
このチームで、この数字をどうつくるのか。
そのために、
誰が、どこで、どんな力を発揮するのか。
どのクライアントに可能性があるのか。
どのマーケットを伸ばすのか。
一人ひとりの経験や強みも考えながら、みんなで数字をつくっていく。
これも、チームづくりの一つでした。
「公平」と「同じ」は違う
管理職になると、
「みんなを公平に扱わなければ」
と考えます。
もちろん、それはとても大切です。
でも私は、
公平にすることと、全員を同じにすることは違う
と思っています。
全員に同じ仕事を任せる。
全員に同じ数字を求める。
全員を同じ方法で育てる。
一見すると公平に見えます。
でも、人は一人ひとり違います。
経験も違う。
得意なことも違う。
担当する市場も違う。
クライアントも違う。
だから管理職が考えるべきなのは、
「どうすれば全員を同じにできるか」ではなく、
「違う人たちが、どうすれば同じゴールを目指せるか」
なのではないでしょうか。
「自分ならできる」を基準にしない
そして、ここであの上司の言葉に戻ります。
「阪本さんにできることでも、誰にでもできることではない」
管理職には、自分なりの経験があります。
成功体験もあります。
だから、つい、
「私ならこうする」
「私はこれくらいやってきた」
「どうしてできないんだろう」
と考えてしまいます。
でも、自分にできることを、そのまま部下に求めても、その人の力を活かすことにはなりません。
大切なのは、
「なぜできないの?」ではなく、
「この人が力を発揮するには、何が必要なんだろう?」
と考えること。
その問いに変わると、
任せる仕事も、
かける言葉も、
育て方も変わってきます。
管理職は「自分と同じ人」をつくる仕事ではない
慎重に考える人。
まず行動する人。
人と話すのが得意な人。
数字を見るのが得意な人。
細かい変化によく気づく人。
全体を見るのが得意な人。
新しいアイデアを出す人。
決めたことをコツコツ続ける人。
一人ひとり違います。
その違いをなくす必要はありません。
むしろ、
違うからこそ、一人ではできないことができる。
管理職の仕事は、
その違いを消すことではなく、
違いをチームの力に変えること。
ゴールは共有する。
でも、そのゴールへ向かうために発揮する力は、それぞれ違っていい。
そんなチームをつくることが、マネジメントなのだと思います。
誰と働くかは選べなくても、どんなチームにするかは変えられる
上司は部下を選べない。
部下も上司を選べない。
一緒に働く同僚だって、多くの場合は自分で選んだ人ではありません。
会社から選ばれた人たちが集まり、一つのチームになります。
だからこそ管理職には、
「今いるメンバーで、どうすれば一番大きな力を出せるだろう」
と考える役割があります。
誰が何を得意としているのか。
誰と誰を組み合わせたらいいのか。
誰に、次はどんな経験をしてもらいたいのか。
今はできない人を、どうすればできる人にしていけるのか。
そして、
管理職である自分にしかできない仕事は何なのか。
かつて私は、
「誰がやるの?」
と聞かれて、
「私がやります」
と答えていました。
今なら、もう一つ考えると思います。
「私は責任を持つ。では、この仕事をチームの力に変えるには、誰に何を任せよう」
と。
誰と一緒に仕事をするかは、選べないかもしれません。
でも、
その人たちと、どんなチームをつくるかは変えていける。
一人ひとりが持っている違う力を見つけ、組み合わせ、育てていく。
そして、
1+1を、2ではなく3にも4にもしていく。
それこそが、管理職にしかできない仕事なのではないでしょうか。
一人ひとりが持っている違う力を見つけ、組み合わせ、育てていく。
それが、私が大切にしてきたチームづくりです。
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